駄猫の時事放談

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今の日本でこのまま自由化を加速させるべきではないと考えられる理由 

これは国民のモラルが十分に高くならないうちに、経済の自由化とか、グローバリゼーションなどと呼ばれるものが進むと、どんなことが蔓延るかということの好例だろう。

旧ソ連諸国の女性に売春強要 トルコが人身取引の最大市場に

旧ソビエト・東欧共産圏から若い女性が騙されてトルコに連れてこられて、性奴隷にされている。闇組織は飲食店での職を斡旋するという嘘の条件で若い女性を集めて、入国後に旅券を取り上げ、暴力で脅して売春を強要するのだ。
トルコ政府はIOM(国際移住機関)を支援して、その摘発に力を入れていることを内外にアピールしている。

フランスのシラク大統領が先月、「5月10日を奴隷制犠牲者追悼の日に」などという声明を発した。トルコ政府はEUへの加盟を交渉中なのだが、その筆頭格の国家元首がそういうことを公言しているから、この問題の解決に取り組むことも加盟の条件にされているのだろう。

こういう売春強要も含めて、現代に蔓延る奴隷制について、詳細なことが書かれている『グローバル経済と現代奴隷制』という本をここで紹介したことがあるけれど、こういう話を読みながら、今の日本社会の現状を見ると、聖域無き構造改革と称して、自由化やグローバリゼーションに突っ走っている政治は危険なのではないかと感じている。

上記のソースの内容にしたって、日本にも関係のある話なのだ。旧共産圏の女性が性奴隷として連れて行かれる先はトルコに限らず、東南アジアや韓国、日本も含まれているからだ。
そして、『グローバル経済と現代奴隷制』(ケビン・ベイルズ著、凱風社)の353〜354ページでは、日本の官憲の腐敗が指摘されている。日本の警察当局は見て見ぬふりどころか、奴隷売春を営んでいる暴力団組織などと癒着しているようなことが書かれているのだ。

先進国の中で、エイズの感染者が増加しているのは日本だけだという統計データは、こういう売春が多いことも物語っているのかも知れない。

ライブドアの元社長・堀江貴文のような輩の存在も事態を悪い方向へ向かわせているのではなかろうか。「女は金についてくる」「金で何でも買える」的な言葉をメディアを通して聞いた日本人の中には、良くない影響を受けている奴も少なくないと思う。
断っておくが、私個人はライブドアを前から胡散臭いとは思っていながら、堀エモンの人間性自体を強く嫌っていない。率直な物の言い方にはある種の好感を感じることがあった。
しかし、堀エモンの人間性の善し悪しよりも、世間がそれをどう感じるのかということや、その言葉を聞いた若者がどういう影響を受けるかということの方が問題なのだ。
この不祥事を材料に小政治をやっている民主党もレベルが低いと思うが、そんな堀エモンにお墨付きを与えてしまった宰相や経済金融担当大臣も罪作りだと思う。
実際、堀エモンがニッポン放送に買収を仕掛けた目的は放送権の莫大な利益性だが、その向こうも見落とせない。芸能人の女を自分の物にしたいという性欲も強かったことは疑いのないことなのだ。
そんな堀エモンの虚業に心酔する奴が少なからずいるような社会には、奴隷制売春が蔓延る素地が多分にあるような気がしてならない。
性欲は誰しも持っているものだが、その堀エモン語録が一人歩きして、社会に悪影響を及ぼしている面があって、人間性への慈しみを考慮せず、性を金で買うという行為を増やす一助になっているかも知れない。

人身売買・奴隷売春のことばかりではなく、労働問題にしたってそうなのだ。
日本の労働者は欧米諸国と比べて、その権利を蔑ろにされている面が多々ある。
まず、単純に労働時間が世界的に見ても、長過ぎるということがある。
モリタクが著書で懸念を示している「アメリカの格差社会」ですら、日本と比較すれば、労働者を守る法律が機能しているのではないかと思う。
欧州でもそうだが、年休の消化率が高い。
自動車の組立工場のラインのコンベアの速さは、日本国内のメーカーの工場よりもゆっくりだ。
求人の応募者のプライバシーも厳しく保護する法律も実効性がある。

日本はフリーターの増加によって、税収が下がり、財政が厳しくなるなどということが懸念されているが、非正規雇用を増やすことと法人減税で、企業の社会コストに対する負担を軽くし過ぎているからだろう。逆に言えば、企業は法人税の税率を下げる恩恵を受けながら、人件費を安く浮かす雇用形態を活用し易くなったから、利益を回復できたのだ。企業は二重に負担を免れているという見方もできなくないではないか。
実はデフレというのも嘘で、単に人件費の削減効果が物価に表れているのではないかという見方もできるのだ。
それに対して、欧州大陸のある国のことを指摘すれば、日本よりも非正規雇用で働く人間の割合が多い。でも、正社員との賃金格差が小さい。
そして、日本と比べて、法人に課せられる税率は高いのだし、そこに進出している日本系企業だって、その負担をさせられているのだ。
加えて、昨今は未経験の若者の職業能力を育てる負担までも、企業にフリーライドさせて、教育現場に押し付けるような方向で世の中が動いている。
今の日本は消費税の税率を上げる議論をする前に、法人に負わせるべき物があるのではないかと思う。

警察が人身売買を野放しにしていれば、労働基準を監督するべき立場の官庁の役人も天下りの見返りに企業の不正を見て見ぬ振りだ。

以上のことから、海外の視点で見れば、日本人は自分たちで思っているよりも、モラルが発達していないと考えられないだろうか。
この現状で「聖域無き構造改革」とやらが進めば、今以上に碌でもない社会の到来を招き、資本の一方的な理論で無法が蔓延る世の中になってしまうだろう。

私のこのような意見に対して、予想される反論は2月10日に書いたエントリーでも触れたが、「欧州を手本にした弱者保護を重視した福祉の拡充は国民の意欲の減退を招いたり、行政権の拡大によって、ファシズムや共産主義が生成され易い政治体制になってしまう」ということがある。
つまり、法学的な観点から国政を論じている識者の中には、今の与党の改革や外交方針を阻止して、モリタクの理想論のような政治体制を選択することは、「人類が長年の苦闘の末に勝ち取った『国家に束縛されない経済・思想の自由』を再び無に帰される結果に繋がるきっかけになると見ている者が多いのだろう。

しかし、このまま見過ごしていても、そういう意見の持ち主が恐れる結果が生じる可能性が無いとは思えないのである。

ここで話を冒頭の旧共産圏の女性が犠牲になっている人身売買のことに戻す。
大統領が奴隷制犠牲者追悼記念日の制定を宣言したフランスでも、公には19世紀まで奴隷制が存在した。
それは、法学的に行政権の縮小(小泉改革)を支持している識者の主張の言っている「人類が長年の苦闘の末に勝ち取った自由」そのものも意味しているあろう。
下記のリンク先には、まだ、三権分立の概念が無くて、「司法権と警察権」を封建領主が持っていた時代の東欧社会の慣習について書かれているが、現代の人身売買や現代奴隷制と同じような非道が繰り返されてきたことを示す内容だ。

http://profiler.hp.infoseek.co.jp/elizabeth_bathory.htm

『グローバル経済と現代奴隷制』では、インドやパキスタンで現代資本主義と封建制度のハイブリッドの例が存在していることが詳述されている。
パキスタンでレンガ製造に従事する債務労働者の例について、本で暴露されている概略をここのブログにも書いたが、封建社会の貴族と農奴の関係そのものなのだ。
つまり、グローバリズムの推進は意欲のある人間・組織の能力を引き出して成長させる可能性を持ちながら、モンテスキューが『三権分立』の概念を発明してから禁じられるようになった蛮行が意外な形で蘇り、強者による弱者の搾取が栄える余地が生じてしまうというパラドックスを内在している。

まだまだ、欧米と比べて、モラルが十分に育まれておらず、人権について鈍感な部分が多い今の日本で、資本の理論を優先させた自由化を輸入して取り入れることは、危険なのではないかと考えられる。

以上の結論に失笑を覚える人間がいるなら、福祉国家の憲法がファシズムやコミュニズムを育み易いという考え方も矯激に過ぎるという反論ができるだろう。
2006/02/16 10:36|政治CM:0
 
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